Introduction
小さい頃、深夜になると
隣の部屋から祖父が階段をのっしのっしとおりていき
少し重い家の玄関がガラガラと開く音を
布団の中で、夢うつつに聞いていました。
そして、しばらくするとまた玄関が開き
のっしのっしと寝屋へ戻っていく。
夏も冬も雨の日も
毎夜、海を眺めながら海で用をたすというのが漁師だった祖父の日課でした。
そんな祖父の見ていた海は、今も満ち引きを繰り返しています。
その頃の当たり前の景色や毎日が
無意識に自分の中に蓄積され、そのうえ更に完全に忘れていたものが、作品を通して繋がっていきます。
それを意識できるときもあれば、意識できないときもある。
そう考えていると、作品は、どこを切りとっても、これまでのすべての環境や経験、身長や体重
更には、遺伝子までもが刻銘に記録されているものの様に思えます。
Exhibitions
Works
Concept
海のすぐ側で生まれ育ったせいかステンレススチールという素材の様々な表情が海と重なり魅かれます。
ステンレスは、海になる素質を持っている。
そう思っています。
熱したり、叩いたり、焼成したり、磨いたりする私の行為をきっかけに、ステンレスが応えてきます。
そして、指示を出してくる。
そうなると、私はステンレスの指示に従います。
作品のコンセプトは、その都度変わっていくのですが、ふと流れてきた音楽に鳥肌がたつ様に、頭で考えるよりも先に、細胞が反応するような、いつか、そんな作品を自分の手でつくりたいと思っています。